BE THERE

araya21.exblog.jp ブログトップ

タグ:HM関連 ( 59 ) タグの人気記事

HM/short short ~夏日に咲いた灯火を~

「……久しぶりだな、碧」

「……はい」

「その……元気だったか?」

「……はい。この2年、大した病気もせずに無事過ごして来ました」

「………そうか」

「……………」

「本当に……すまなかった」

「か、顔を上げて下さい。周りの人が見てます……」

「こんなに長い間、お前をほったらかしてしまって……父親失格だな」

「そんな………」

「この程度の事で許されるとは思っていないが……これからはきっと、心を入れ替えて……」

「………私」

「えっ?」

「私、今とても幸せです。毎日が充実してます。勿論、私一人の力で得たものではないですけれど」

「……………」

「大切な人達がいます。大好きな友達がいます。たくさんの思い出があります。ここには……私の居場所があります。それはアメリカにいた時には想像も出来ないような奇跡で。この学園に来てから、初めて知った感情でした」

「碧……」

「私、この学園に入れてよかった。皆さんに出会えて、そして支えてもらえなければ、私は未だに自分の殻に閉じこもったままだったでしょう。この学園に入れるようにして下さって感謝しています。……その、『お父さん』」

「……! 俺を……こんな不甲斐ない俺を今でも父と呼んでくれるのか、碧……?」

「当たり前です。私にとってのお父さんはお父さんしかいませんよ」

「………。『親はなくとも子は育つ』、か……」

「えっ?」

「良い顔をするようになったな。俺では眩しくて真っ直ぐに見れない程、笑顔が似合う女の子になった。昔の母さんそっくりだよ」

「……お母さん……」

「フフフ、お前は殆ど記憶にないだろうがね。……ああ、そうか。随分印象が違うと思っていたが、眼鏡を替えたんだな。昔はそんな派手めな眼鏡、絶対に選ぼうとしなかっただろうに」

「あっ、これは……友達が私に選んでくれて……」

「ほう、そうか。……フフフ、その友達は凄く碧の事を見ているんだな。でなければここまで似合う眼鏡を探し出す事なんて出来ない」

「この眼鏡、私に似合いますか……?」

「ああ、とてもよく似合っているよ。もうそれじゃなきゃ碧じゃないくらいにね」

「あ、ありがとうございます。……フフフ、似合うかあ……嬉しいな。えへへ……」

「……本当に変わったな。いや、成長したと言うべきか。余程良い出会いに恵まれたと見える。お前のその明るくなった表情一つ一つを見る度に、何でもっと早くから傍にいてやらなかったのかと悔やまれるよ。……本当、俺はバカだった」

「これからは……これからは一緒に居れるじゃないですか。悔やんだ事は忘れずに、これからをより良いようにして行こうと努力すれば、必ず道は開けますよ」

「……そうだな。その通りだ。……フフフ、まさか娘に諭される日が来ようとは、俺も歳を取る訳だ」

「……私の尊敬する先輩からの受け売りですけどね。あっ、それじゃあ今から、私の大切な人達を紹介します。事務所に行きましょう」

「お、おい碧!?」

「ほーら、早く付いて来ないと置いて行っちゃいますよお父さーん!」

「ま、待ってくれ碧ー! ……全く、明るくなったのはいいが、別人みたいでドキドキするよ。だが良かった、碧が幸せそうで。その成長が見れただけでも、日本に帰って来た意味があるというものだ。……俺はもう間違えない。大切なものは手放さない。……フフフ、この歳になってようやく気付けるとは。俺もまだまだだな。おい、待ってくれって碧ー!!」





「……ところで、親子なのに敬語なのはどうしてだ?」

「どうしてと言われても……私は誰に対しても敬語ですし……」

「どうせならその勢いで『お父様』とか呼んで欲し……」

「……今すぐアメリカに帰って下さい……」



web拍手を送る
愛しき涙に微笑みを 哀しき涙にさよならを。
[PR]
by araya-shiki | 2011-04-16 12:59

きっと冷たくて暗い雨だって 誰か救っているから。

風が……呼んでいる……

……私は一体何処に向かうつもりなのでしょうか。『つかテメエ、また更新サボりやがったな』という皆様からのツッコミを噛みしめつつ、怠惰癖にもそろそろさよなら告げないとイカンかとは思いつつ、実は仕事がこれから激増しそうな勢いなので暇な内に小説書かにゃイカンかとも思いつつ、ゲームする手を止められない新夜なのでした。そろそろ殴られるレベルかと。

さて、ツイッターでHM専属イラストレーターの神菜様とチャットまがいの会話を繰り広げ、HMのイラストを書いてもらいましたので、ソイツを貼ってみようかと。……まあ神菜様のブログに行けば観れるのですけどね、そこは敢えて。最新作『Interlude ~碧と円香の眼鏡と呼び名を巡る物語~』の一幕です~。
f0128830_19371042.jpg

アップされていた絵に『碧が笑顔だといいなぁ』だの『円香が照れて煙噴いてると完璧』などの自分描けねえくせに無茶な注文を付けて完成した絵。『碧と呼んで差し上げますわっ!』『いえ、嬉しいですよ』の辺りですね。うん、凄くシーンの雰囲気を再現されていると思います。めっちゃ好きですね、この絵。やっぱこの二人可愛いなぁ(←病気)。

ついでにもう一枚。碧の眼鏡によるビフォーアフター。
f0128830_19413173.jpg

こちらも雰囲気の捉え方が的確ですね。そう、まさにちょうどこんな感じのイメージチェンジが行われていたのですよ。やっぱイラストがあると分かりやすいですね。……これが私の文章力の限界か……。

……む、夕食で食べた魚の小骨が喉に残ってる感じがする。気持ち悪い……。



人気ブログランキングへ
『また明日』そう言える事は とても幸せで大切な事。
[PR]
by araya-shiki | 2010-02-24 19:57

誰ひとり別々のゴールに向かう事サヨナラを 言葉にはできずはしゃいでる。

ある密かな思いの芽

それは幽かに 小さく 本人さえ気づかずに

でも確かに 心の熱を加速させる

素直に 淡く煌めいて

導く絆の向くままに

彼女の願い 彼女の夢

全ては標の指す方へ

唄うように 微笑むように



光の糸を繋げよう―――――




……はい、そんな訳で公約通りHMの新作『Interlude ~碧と円香の眼鏡と呼び名を巡る物語~』を更新いたしました。お付き合い頂ければこれ幸いです。

碧と円香の物語です。まあ裏で糸引いているのは微妙にあの人な気はしますが。彼はそういう人ですし。とにかく最近の作風とは少し違う感じですが、ほっこり出来ればいいんじゃないかと。今回も楽しんで執筆出来ました。こういう路線は元々好きですし。

それでは、読みたい方こちらから→Harmonical Melody

さて、HMは次回は遂にEpisode3ですね。……でも暫くHMは置いといて、『ルーラーの館』の方の作品を幾つか書こうかと思います。最近HM続きでしたからねー。彩桜もDQも綾乃も随分放ったらかしてる感じがしますし(汗)。そんな訳で、HMはしばし休憩です。ご了承を。……嗚呼、瞬ってばやっぱり不憫な子……(泣)。

ふむ、ちょっと肩の荷が降りた。しばらく執筆も休むか(マテ)。



人気ブログランキングへ
足跡は曲がっていても 目指す先は唯一無二。
[PR]
by araya-shiki | 2010-02-20 13:20

何もかも巻き込んだ想像で 遊ぼう。

其に有らん 夢の所在

願ったその先に 楽園を見た

すれ違い 思い違い 伸ばすその手は揺らめいて

些細な幻視を加速する

目覚めたのは 情熱だけではなく

ある密かな恋心

理想を凌駕し 静かなる金の音は

優しく妖艶に微笑んで



堕落を誘う 神経毒―――――




…はい、そんな訳で本日、HMの最新作『Work of SSS File No.5 ~キレイなお姉さんは好きですか?・後編~』をアップしました。お暇でしたらお付き合い頂ければ幸いです。

実は仕事が暇だったので夕方前くらいには既にアップしていたのですけどね。twitterやあっちの活報にはもう告知しているので、もう読んで下さった方もいるかと思います。内容はカオスです。出てきちゃいけないアイツが出てきたりします。まあ笑ってくだされ。

それでは、読みたい方こちらから→Harmonical Melody

以下はネタバレなのでmore設定。読んできてから開いて下さいな。

More
[PR]
by araya-shiki | 2010-01-14 20:04

どんなに気軽に容易く見つけたって 愛は愛であるように。

恋は光 光の風

囚われた小鳥は羽を畳み

小さな瞳をさまよわせ 捜し物は記憶の底に

突然の来訪者は 難題を持ち掛けて

熱を帯びて舞い上がる

其は音色 此は迷想

夢に誘われ 招かれて

淡き思いに落とし込まれ



幻想の果てにて昇華する―――――




はい、それでは公約通り、HMの最新作『Work of SSS File No.5 ~キレイなお姉さんは好きですか?・前編~』をアップいたしました。楽しんで頂けたらこれ幸いです。

概要は昨日の記事に書いたようにギャグです。トサカがちょっと活躍してます。……まあ不憫なのは変わらんのですけど(汗)。そして何気に、前作『Work of SSS File No.4 ~価値の所在はその胸に~』と同時間軸上に存在する出来事です。先に『価値の所在』を読んでおくと少しだけ面白くなるかと。

……しかしま、タイトルが示す通り『前編』でして、本当のカオスは後編なのですけどね。何せあの方が……ゲフンゲフン 前作は既に何人に読んでもらっておりますが、その方々はもうちょっとお待ち下さいな。後編もすぐにアップしますから。

それでは、読みたい方こちらから→Harmonical Melody

さて、今日はキレイに晴れてるし、買い物でも行って来よう。取り敢えず鼻炎薬買って来ないと。



人気ブログランキングへ
キミが歌う キミが笑う 幸せな午後の1シーン。
[PR]
by araya-shiki | 2010-01-11 10:14

答案真っ白でも 未来がバラ色ならよくね?

今日の記事は久々(?)に超マニアックに走ろうかと思うのですが、よろしくて?付いて来れなきゃ来れないで結構です。

昨日の記事でギターメンテ云々と書いていたら、何となく『Melodious Mindの音楽的スペック』について語りたくなってしまった元ミュージシャン志望の来年三十路。小説の方では殆どマイメロの活動、というかライブの描写や楽曲の解説などがないので、今日の記事はその辺を補完。……や、ライブシーンはその内出て来ますよ。私が出さないはずがない。ぶっちゃけると、理央編のエピソードでマイメロがライブをします。……現段階での構想では(マテ)。

閑話休題。

まず、理央の使用しているギターはズバリ、ギブソンのレスポールカスタマイズバージョン。色はボディーが黒、金具部分は金です。分かりやすいですね。……レスポールとか、別に『けいおん!』に影響された訳では決してありません。このギターは『NANA』でレンが使っているタイプであり、唯が使っているのはスタンダードタイプで且つチェリーサンバーストなので色もグレードも違います。そもそも、理央にこのギターを使わせる設定は『けいおん!』を知る前から考えていたものなので、あくまで偶然の産物である事を強調しておきます。……でもNANAにはしっかり影響されている(汗)。

雪夜はボーカルですが、作曲する時はDTMを使用します。ソフトは『Logic Audio Platinum』。……まあこれは私が使っている作曲ソフトなのですが(汗)。今では時代遅れでしょうか。最近DTM事情には付いて行けませんので。それと同時にシンセを一台持っています。それが『Roland Fantom-G8』。紬の使う『KORG TRITON Extreme』なんて言う金満な機材は買えません(値段が9倍くらい違う)。ライブで春奈が弾くのはこのRoland。雪夜がシーケンスプログラムを組んで春奈に貸し出す訳ですね。

マイメロは基本的にシンセ+ギターのスタイルを取っています。つまり、雪夜なり理央なりがまずメロと詞を作り、コードを入れて、DTMとシンセでオケを作り、MTRでボーカルとギターを重ね録りしてデモテープ完成、となる訳です。ライブの時はシーケンサーから手弾きパートだけをミュートして春奈に弾かせる、と言った流れ。という事は基本的にベースやドラムパーカッション、手弾き以外のバッキングなどは全て打ち込みです。バラードなどの曲調に応じてヴァイオリンや生ピアノが欲しい時には静流を助っ人に呼ぶ訳ですね。

……果たしてここまでキチンと理解して付いて来れた閲覧者様はいたのだろうか。いない気がします。この辺は完全に私の趣味の領分でして、別に理解してもらおうと思っている訳ではないし理解しなくてもHMは読めるのですが、理解出来るならHMのまた違う味が楽しめるよーという事です。いずれ、マイメロが劇中で演奏している曲を公開出来たらいいなぁと薄っすら思っている(『リリカルワールド』に歌詞を載せた3曲)のです。それが、私の望みです。

さて、閲覧者様は置き去りだろうが私的には非常に満足のいく記事が書けたぞ。今日はよく眠れる気がする(笑)。



人気ブログランキングへ
その音色は美しく 狂おしく咲き乱れ。
[PR]
by araya-shiki | 2009-11-24 21:11

きっと地球で一番揺ぎないものは 人を思う強さ。

思い出だったり 友達だったり

空の青さだったり 陽の赤さだったり

『価値』の意味は 『価値』の意義は

きっとその胸の奥に

誰もが持ち 誰もが違う

例え誰にも 理解されなくても

大切な気持ちを 心に灯る思いを伝えたくて

ただ たったそれだけで



人は何かを守り続ける―――――




……はい、イベントやるとか言ってましたけど、何か気力とネタが微妙なので普通に公開する事にしました。このセンティメントは『Work of SSS File No.4 ~価値の所在はその胸に~』のものです。『小説家になろう』の方へアップして来ました。…一応イベントの準備はしてたのですけどね……。その為にエキサイトIDをもう一つ追加で取得とかしましたし。まあもう削除しましたけど。

若干の手直しはしてあるものの、結局宙矢様とのコラボはそのまま残しました。あっちに載せるに当たって、コラボをそっくり掲載するのはどうかなーと思っていたのですけど、何だろう、書き直す気力も頭もなかった訳ですねー、あははー。……笑い事じゃねえぞコラ。新作書けているので時間がなかった訳ではないし。

あ、新作は下の記事でちゃんとアップされていますよ。イベントではないのでフツーに読めますよ。前述通り、何か時間軸がおかしいので『なろう』には移さない方向で今の所考えています。…まあその内、気が変わる可能性もありますけど。そこは気紛れ新夜の真骨頂。その気紛れの所為でイベントもトばしてますしねー、あははー。……楽しみにしてくれていた人ゴメンなさい。イベントはまたその内必ずやりますんで。その時はまた私の声でも景品に(強制終了)

それでは、読みたい方こちらから→Harmonical Melody
※新作は下の記事です。このリンクに飛んでも新作は読めません。

さて、これで手持ちのHMは一頻りアップし終えた事になりますね。バレンタインとエイプリルフールのやつは今回の新作と同様の理由で移す気ないので。ああ言う季節・イベントに絡めた短編は時系列を乱すのでブログのみの公開とする事に決めたのですよ。どうせならハロウィンネタでも書けばよかったかも?……つーてもハロウィンネタなんて、仮装した春奈が『とりっくおあとりーと♪』とか言いながら雪夜にイタズラ(キスを迫るとか)するも、雪夜が氷のスルーでお菓子を与えて逃げるくらいのネタしか思いつきませんが。……もうちょっと広げれば意外とちゃんと書けるかも?

まあそんなこんなで、久々にHMまみれの休日午前更新でした。まる。HMは次回から全て新作となりますので、今後も末永くお付き合い下さいませ。



人気ブログランキングへ
日溜まりの中で 何を思う 麗らかな日差しの下で キミは一体何を思う。
[PR]
by araya-shiki | 2009-11-03 10:45

HM/Interlude ~対決!炎の豪腕vs氷雪の軽業師~

「頼もぉぉぉ!! いざ尋常に拙者と勝負致せぇぇぇぇぇぇぇぇぇィ!!」

「…………………」



 風雲急を告げるように、乾いた風が対峙する二人の男の間を吹き荒ぶ。時は戦国、場所は川中島……と言いたい所だが、実際には現代の放課後でありSGの校庭。高等部2年の水乃森雪夜は授業が終わり『さて、今日も部活か。今日はどんな探偵っぽくない仕事をさせられるんだろう。どーでもいいけど、DDDの三巻っていつになったら出るのかねぇ』とか思いながら傍らの幼馴染・日坂春奈を伴ってSSS事務所を目指して校庭を歩いていた所、突然時代錯誤な輩に因縁を吹っ掛けられたのであった。
 180cmを超えるであろう身長、がっしりとした体躯、精悍な顔つき、歴戦を刻み付けたように傷んだ学ランと学生帽(SGはブレザー着用の為校則違反)、素足に下駄(何故か校則違反)、と言った『番長』の教科書のような風貌をした男は、腕を組み大声を張り上げて雪夜を睨み付ける。その口調と相まって一般の生徒とは一線を画した雰囲気を放っている。周りは彼の男気に惚れ慕った舎弟が大勢で取り囲む。その異様な光景を、槍玉に挙げられた当の雪夜はぼへーっとした表情で訳も分からず眺めていた。

「………えっと、オレに一体何の用………」

「水乃森雪夜ぁぁぁ!! いざ尋常に拙者と勝負致せぇぇぇぇぇぇぇぇィ!!」

『ウオオオオォォォォーーーー!!!』

 番長は再び咆哮を上げる。その気合の入った雄叫びに、周りの舎弟も揃って気勢を上げる。雪夜の問いなぞ聞いちゃいねえ。さっぱり要領を得ない雪夜を尻目に、春奈が小さく言葉を漏らす。

「あー……、来ちゃったかぁ……」

「……ん? お前あの人達の事、知ってるのか?」

「うん、まあ……ね」

 雪夜が問い質す。すると春奈はいたずらが見つかった子供のような表情で、事の真相を話し始めた。

「私ね、ちょっと前にあの番長さんの後ろにいる人にコクられたんだよね。私の事が好きなんだって、あの人。瞬殺で断ったんだけど、あんまりにもしつこいもんだからその時テキトーに『雪夜に勝ったら考えてあげてもいーよ♪』って言っちゃったんだよねー♪ 冗談のつもりだったんだけど、どうやら本気にしちゃったみたい。しかも番長さんを連れて来るなんて、割と手段を選んでないね、あの人」

「…………………」

 春奈に指差された番長の後ろにいる人物は一瞬ニヤリと口元を歪める。
 一連の流れはこうだ。まず、学園に存在する番格グループ(と言っても学園を支配している訳ではなく、番格を気取って悪ぶっているだけのボランティア団体)の生徒の一人(ウザイので名前なんぞ付けてやらん)が春奈に恋をした。某無責任保険医に焚き付けられ無謀にも告白した際はあっさり玉砕してしまったのだが(『Interlude ~恋愛の伝道師による恋愛で悩む生徒の為の恋愛クリニック、開設~』を参照の事)、どうしても春奈を諦め切れなかった彼はしつこく食い下がった。そこにうんざりした春奈の口から前述の条件が飛び出したのである。彼は直情的な性格の番長をテキトーに丸め込み(主に泣き落とし)、卑怯にも自分の代わりにこの決戦の場に引っ張り出したのだった。

「水乃森雪夜ぁぁぁ!! 貴様、高校生にもなってカメを虐めるなんぞ、男の風上にも置けぬわぁぁぁぁ!! その腐った性根、拙者が叩き直してくれるわぁぁぁぁぁ!!」

『ウオオオオォォォォーーーー!!!』

「…………………………」

 目の前にカオスが展開されている。彼は一体どんな説得をして番長をこの場に連れ込んだのか、『カメに謝れ』だの『貴様はウサギか』だのと言った意味不明な咆哮が飛び交っている。番長は虐められた(とされる)カメの心情を察してなのか、若干涙を浮かべていた。意外とイイヤツなのかも知れない。

「春奈………。お前、そんな理由でオレが納得するとでも思ってんのか?」

「や、雪夜ならはっきりきっぱり諦めさせてくれるかなって♪ 何なら『オレの女に手を出すな』くらい言ってくれてもいーよっ♪ ……あ、それとっても素敵かも……♪」

「アホらし……。お前が蒔いた種だろ。もう勝手にしろよ」

 ふーやれやれ、と雪夜は嘆息し春奈を置いてその場を去ろうとする。そんな雪夜に春奈は

「そーぞーして下さぁーい♪」

「うわッ!?」

 耳元で囁き掛けた。

「あの人と楽しそうにお喋りする私。あの人と手を繋いで登下校する私。そして……」

 雪夜の頭の中をイメージがぐるぐると駆け巡る。それはやがて全てを埋め尽くし、他の事など何も考えられない。そして、決定的な一言。





「あの人に『はい、あーん♪』ってお弁当を食べさせている私」
「よっしゃやろう。オレの相手はどいつだ! どっからでもかかって来いや!!」





 雪夜の瞳に炎が灯る。拳をボキボキ鳴らして臨戦態勢スイッチオン。実はこれが初めてではない。過去にも似たような手口で、雪夜は春奈を何度も守らされていたのだった。……実に単純である。これで何故未だに素直になれないのか、筆者としても理解に苦しむのだが。

「ほう……良い度胸だ。貴様は拙者が必ずやぶちのめしてカメの御前に平伏させて謝罪させてやろう」

 番長が学ラン(校則違反)を脱ぎ一歩前に踏み出す。雪夜は正面から対峙。その距離はおよそ5m。えも言われぬ緊張感が周囲を包み、水を打ったような静寂が場を支配する。

「フン、アンタはオレには勝てない。宣言してやろう。アンタは『後頭部を強打して』オレに負ける。覚悟しておきな」

 不敵にそう零すと、雪夜はカバンを春奈に預けて神経を研ぎ澄ます。雪夜の言葉に番長は首を傾げるが、それも一瞬。雪夜同様に臨戦態勢を整える。



 こうして……ツッコミ所満載の様々な思惑が交錯するバトルがここにその幕を開けた―――



「シッ!!」

 短く息を吐き、雪夜は番長へと真っ直ぐに疾駆する。迎え撃つは番長の右ストレート。タイミングを合わせカウンターで雪夜の顔面を狙う。

「オラァ!!」

 裂帛の気合。敵を粉砕せんと豪腕を振るう。その正確さと迫力は驚嘆に値する。並みの相手ならば一撃で倒し得るその拳は、しかし。

「―――!?」

 空を切る。当然だ。雪夜は迎撃される事など百も承知で飛び込んでいるのだ。予測、と言うより計算通り。拳は紙一重の差で頬をすり抜ける。ボクシングでいう『ヘッドスリップ』という回避法だ。

「ふッ!!」

 間髪入れずに雪夜は身を跳ね上げる。番長の右ストレートをかわし相手の左側に回りこんだ雪夜は慣性に逆らわずにそのまま流れに乗り、独楽のように身体を捻ると番長の『後頭部』に回し蹴りを叩き込む―――!

「ぬっ!? これしきの事で……!!」

 しかし、敵もさる者。『狙う』と宣言されていたものをそうあっさりと決めさせるはずがない。身を屈めて回し蹴りをやり過ごす。同時に下から雪夜の身体をアッパーで狙おうとするも……その雪夜は信じられない事に、

「ッ!?」

 蹴りに行った足を瞬時に畳む。円を描いていた蹴りが途中で直角に変化する。ちょうど踵落としのような軌跡を辿って番長の肩を蹴り、反撃を抑えると同時にその反動を利用して二歩バックステップ。一瞬にして元の立ち位置に舞い戻る。曲芸のような運動能力。これぞ雪夜のスタイル。番長がパワーで捻じ伏せるタイプなら、雪夜は真逆のスピードとテクニックで相手をいなす。
 
「これは……なかなか」

 初手のやり取りで何かを感じ取ったのか、嬉しげに口元を歪ませながら体勢を整える。対して雪夜は無表情。骨のある獲物に闘争本能を刺激され、番長は気合を入れ直す。熱を帯びるバトル。最早周囲がどうこう口を挟める領域ではない。その場にいる誰もが、固唾を飲んで戦況を見守っている。

「ハッ!!」

 対峙した位置から再び雪夜が疾る。番長も迎撃に向かう。時間を巻き戻したような二度目の交錯は、僅かに、そして大きく状況を変化させる。

「が……がはっ!?」

 番長が苦しげに息を吐く。
 雪夜のスピードを目の当たりにした番長は、先ほどの反省を生かして迎撃をストレートからフックに切り替えた。直線ではなく曲線で巻き込むように雪夜を捉えようとしたのである。工夫は功を奏し、初撃では空を切った拳は雪夜のこめかみを僅かに捉えるに至ったのだが……変化を凝らしたのは雪夜も同じ。ヘッドスリップで横をすり抜ける際、水月、即ち鳩尾に掌底を叩き込んだのである。
 カウンターを視野に入れたヘッドスリップは僅かに精度を欠き、先ほどは完璧にかわして見せた番長の拳を掠らせてしまったが、それを覆して余りあるダメージを番長に負わせた。正に『肉を切らせて骨を断つ』。そして雪夜は間髪入れずに

「りゃあ!!」

 左フックで番長の『後頭部』を捉えに掛かる―――!

「くっ!?」

 酸素欠乏でフラフラの頭を抱えながら、それでも番長は狙われた『後頭部』を必死でガードする。相手の狙いは『後頭部』だ。ここさえ守りきれば、勝機も見えて来よう。
 ……しかし次の瞬間。

「え―――!?」

 予想外の部位に強い衝撃を受け、顎が浮いた。衝撃を受けたのは後頭部……ではなく、足元。正確には『膝の裏』だ。つまり雪夜は左フックで番長の『後頭部』を狙うと見せかけ、同時にローキックを繰り出して膝の裏を叩いたのだ。この位置に蹴りを受けて膝を曲げない者などいない。それは人間工学上、仕方の無い事である。
 雪夜は僅かに浮いた番長の顎を見逃さず、首に手を差し込んで―――

「これで終わりだ!!」



 そのまま地面に番長の『後頭部』を叩きつけた―――――!!



「ぐ……ギ……!?」

 倒された番長は脳震盪でも起こしたのか、そのまま泡を吹いて動かなくなってしまう。どう見ても戦闘続行不可能。SG校庭で行われた理由さえ曖昧なバトルは、雪夜の一方的勝利で幕を下ろしたのだった。

「ほらな。『後頭部を強打して』負けただろ」

 乱れた着衣を直し埃を払って、雪夜はサラリと言ってのける。攻撃、それどころかこの台詞さえも全てはこの結果を招く為の伏線だった。番長は雪夜の術中にはまり、後頭部を『攻撃』されるとばかり考えてしまった。意識が後頭部への攻撃にだけ向いてしまい、フェイントや鳩尾・膝裏への攻撃がより効果的に働いてしまったのだ。
 雪夜の真骨頂はスピードでもテクニックでもなくこの『インテリジェンス』。昔から春奈を守る為に場数を踏んでいた経験、卓越した頭脳から導き出される『計算』に則って相手を圧倒する事こそが、雪夜の本来のスタイルであった。無駄に暴力を振るう事こそないものの、そんなこんなしている内に雪夜はケンカが強くなり、何気に『SG最強の座』に収まっていたりする。

「お疲れ様~♪ 今回は珍しくちょっと掠っちゃったね。痛くない?」

「お前の所為だろ……。ったく、いつもながら面倒くさい……」

『………………………』

 雪夜と春奈は何事もなかったように、絶句する人垣を通り抜けてSSS事務所へと向かう。無論、この光景を見て原因を作った彼が春奈を泣く泣く諦めた事は言うまでも無い。



 ……そして後日、雪夜は次代番長に指名され番格グループのガチムチ男共に執拗に追い掛け回される羽目になったのはまた別の話―――――


Interlude out
[PR]
by araya-shiki | 2009-11-03 10:30

想い出を描くこの景色に キミがいて。

嫁に行きますバトン


このバトンは創作作家様やオリキャラをお持ちの方で、親(管理人・作者等)と娘(ヒロイン)で娘の恋人について語り合ってもらいます!
では行きます!
※HMを読んだ事がない方はこちらから→Harmonical Melody

★お二人のお名前をどうぞ!
春奈「日坂春奈ちゃんです♪」
詩希「新夜詩希です」

★娘さんの恋人のお名前は?
春「水乃森雪夜くんでっす♪」
詩「字ィデカすぎだから。そんなに凶兆……もとい、強調しなくても皆もう知ってるから。つーかホントはまだ付き合ってねえのだが」

★恋人の外見は?
春「いっつぁぱーふぇくつ♪」
詩「『恋は盲目』ですね、分かります」

★恋人の性格は?
春「うふふ~♪ ひたすら優しくてぇ~♪ 頭が良くてぇ~♪ 私にだけは甘えてぇ~♪」
詩「ツンデレ。以上。……って雪夜がお前に甘えてる所なんぞ見た事ねえ気がするが。いつの妄想だそれは」

★恋人のどんなところに惚れましたか?
春「具体的にどこ、なんてないよ。私と雪夜は運命だもん……♪」
詩「最初からそういう設定ですから」

★恋人の嫌なところは?
春「もうちょっと積極的になってくれたらなぁ……♪」
詩「正直ホントにカッコイイので若干イラッとします」

★今、ラブラブですか?
春「某ヴァンパイアカップルには負けないもんっ!」
詩「既に負けてるけどな。惨敗だけどな。ダブルスコアだけどな」

★将来はどうしたいですか?
春「『お帰りなさ~い、雪夜♪ ご飯にする? お風呂にする? そ・れ・と・も……♪』って毎日やるのが夢なの~♪」
詩「そんな先の幻想まで書く気はない」

★娘さん、そんな親御さんに一言。
春「もっと雪夜とラブラブしたーい!! さもなきゃ勝手に雪夜を襲っちゃうぞ♪」

★親御さん、そんな娘さんに一言。
詩「……ハ、現状人気で碧に負けてるヘッポコヒロインが聞いて飽きれるわ」


有難う御座いました!!


詩「はい、有難う御座いました」
春「………すっごく納得行かないんだけど、このバトンの内容……。アンタやる気ある?」
詩「気の所為だ。それは全くもって気の所為だ。そう見えるのはきっと天からの預かり物だ。さて、風呂でも入って寝よ寝よ」
春「意味分かんないけど、やる気がない事だけは理解したよ……」



人気ブログランキングへ
風がそよぐ星空に 霞んだ声を響かせて。
[PR]
by araya-shiki | 2009-09-17 20:51

降り立った彼方で目を開けたら 笑顔のままのキミに会えるといいな。

静謐の中にある喧騒

紙とインクの世界 揺らめきは埃のよう

無音は凪 壊す調べを胸に抱き

静寂を司る

一つの過ち 一つの叫び

願いは天に届かずに

打ち消され 掻き消され

虚しく空へと消えて往く



それは 恐怖の《排除プログラム》―――――




……はい、それではHM連続更新、いよいよ最終日となりました。今日の更新は完全新作『Interlude ~漢(おとこ)達と《排除プログラム》の午後~』です。
時間軸的には前2つのInterludeと同じ日の出来事で、何気に今まで誰にも追及されなかった『あの時(ダブルトライアングル)、除け者二名は何をやってたの?』という部分を補完する作品です。つまり、出演者は瞬と瑛理、それと新キャラが一人、……あとはまあ、ちょっとアレな方々が数人。扱いは相変わらず不憫そのものですが(マテ)。

それでは、読みたい方こちらから→Harmonical Melody

以下はネタバレになるのでMore。読んで来てから開くがよろし。感想は出来ればあっちに書いて欲しいニャア♪……などと贅沢こいてみる。

More
[PR]
by araya-shiki | 2009-09-11 19:59
line

幾千の言葉を紡ぎ言霊を届ける新夜 詩希のブログ『BE THERE』。初めての方はカテゴリ『初めましての方へ』を読んで下さい。一応更新復活中。……変わってない? それはきっとタイミングの問題。


by araya-shiki
line
クリエイティビティを刺激するポータル homepage.excite
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30