BE THERE

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HM/short short ~夏日に咲いた灯火を~

「……久しぶりだな、碧」

「……はい」

「その……元気だったか?」

「……はい。この2年、大した病気もせずに無事過ごして来ました」

「………そうか」

「……………」

「本当に……すまなかった」

「か、顔を上げて下さい。周りの人が見てます……」

「こんなに長い間、お前をほったらかしてしまって……父親失格だな」

「そんな………」

「この程度の事で許されるとは思っていないが……これからはきっと、心を入れ替えて……」

「………私」

「えっ?」

「私、今とても幸せです。毎日が充実してます。勿論、私一人の力で得たものではないですけれど」

「……………」

「大切な人達がいます。大好きな友達がいます。たくさんの思い出があります。ここには……私の居場所があります。それはアメリカにいた時には想像も出来ないような奇跡で。この学園に来てから、初めて知った感情でした」

「碧……」

「私、この学園に入れてよかった。皆さんに出会えて、そして支えてもらえなければ、私は未だに自分の殻に閉じこもったままだったでしょう。この学園に入れるようにして下さって感謝しています。……その、『お父さん』」

「……! 俺を……こんな不甲斐ない俺を今でも父と呼んでくれるのか、碧……?」

「当たり前です。私にとってのお父さんはお父さんしかいませんよ」

「………。『親はなくとも子は育つ』、か……」

「えっ?」

「良い顔をするようになったな。俺では眩しくて真っ直ぐに見れない程、笑顔が似合う女の子になった。昔の母さんそっくりだよ」

「……お母さん……」

「フフフ、お前は殆ど記憶にないだろうがね。……ああ、そうか。随分印象が違うと思っていたが、眼鏡を替えたんだな。昔はそんな派手めな眼鏡、絶対に選ぼうとしなかっただろうに」

「あっ、これは……友達が私に選んでくれて……」

「ほう、そうか。……フフフ、その友達は凄く碧の事を見ているんだな。でなければここまで似合う眼鏡を探し出す事なんて出来ない」

「この眼鏡、私に似合いますか……?」

「ああ、とてもよく似合っているよ。もうそれじゃなきゃ碧じゃないくらいにね」

「あ、ありがとうございます。……フフフ、似合うかあ……嬉しいな。えへへ……」

「……本当に変わったな。いや、成長したと言うべきか。余程良い出会いに恵まれたと見える。お前のその明るくなった表情一つ一つを見る度に、何でもっと早くから傍にいてやらなかったのかと悔やまれるよ。……本当、俺はバカだった」

「これからは……これからは一緒に居れるじゃないですか。悔やんだ事は忘れずに、これからをより良いようにして行こうと努力すれば、必ず道は開けますよ」

「……そうだな。その通りだ。……フフフ、まさか娘に諭される日が来ようとは、俺も歳を取る訳だ」

「……私の尊敬する先輩からの受け売りですけどね。あっ、それじゃあ今から、私の大切な人達を紹介します。事務所に行きましょう」

「お、おい碧!?」

「ほーら、早く付いて来ないと置いて行っちゃいますよお父さーん!」

「ま、待ってくれ碧ー! ……全く、明るくなったのはいいが、別人みたいでドキドキするよ。だが良かった、碧が幸せそうで。その成長が見れただけでも、日本に帰って来た意味があるというものだ。……俺はもう間違えない。大切なものは手放さない。……フフフ、この歳になってようやく気付けるとは。俺もまだまだだな。おい、待ってくれって碧ー!!」





「……ところで、親子なのに敬語なのはどうしてだ?」

「どうしてと言われても……私は誰に対しても敬語ですし……」

「どうせならその勢いで『お父様』とか呼んで欲し……」

「……今すぐアメリカに帰って下さい……」



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愛しき涙に微笑みを 哀しき涙にさよならを。
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by araya-shiki | 2011-04-16 12:59 | Comments(0)
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幾千の言葉を紡ぎ言霊を届ける新夜 詩希のブログ『BE THERE』。初めての方はカテゴリ『初めましての方へ』を読んで下さい。一応更新復活中。……変わってない? それはきっとタイミングの問題。


by araya-shiki
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